その設定と結末に脱帽 – 鈴木ごっこ

読んだ。木下半太ワールドが全開の面白い作品だと思う。

話の大まかな内容は1年間鈴木として過ごすことを条件に借金をチャラにするために集められた一家を描いた作品となる。僕はこの突飛な内容に惹かれて思わず買ってしまったが買ってよかったと思う。木下半太さんが書いた本だというのは読み終わってから知ったわけだが言われてみればらしい作品だと思う。木下半太という作家さんは人間関係を描くのがすごくうまい。情景を変えずに会話を主体に人間関係をうまくいじくり読者を引き込んでいく技術はピカイチだと思う。今回の作品だと鈴木家の中でほとんどの話は完結するし、最初に彼の作品と出会った「悪夢のエレベーター」もエレベーターの中でほとんどの話が完結する。全く代わり映えしない情景なのにスリリングで店舗が良い話の流れは素晴らしい。

彼の作品のもう一つの特徴はオチだと思う。起承転結がしっかりしていて、結の部分で予想だにできない内容を持ってきているくせに、それが違和感なく物語に溶け込む。全てはこのオチを書くために本を書きだしたのではないかと思いたくなるほどきっちりハマる結末は気持ちいい。本作品でもこの気持ちのいいきっちりとハマった結末が待っているので最後まできっちり読んで欲しい。

あなたはラストで息を呑む – パーフェクト・ストレンジャー

見た。最後10分であなたはきっと騙されるというウリ文句に惹かれて見たが、ウリ文句に嘘はなく、僕はまんまと騙された。

話は主人公である女性記者が議員のスキャンダルをスクープした時から始まる。新聞の1面を飾ることが出来るほどのスクープだったが、議員の権力に酔って握りつぶされ、衝動的に新聞社をやめてしまう。そんな時に幼なじみからスクープを持ちかけられるが、その話を聞く前に幼なじみが殺されてしまう。少しだけ離されたスクープを元に幼なじみを殺した犯人を調査していく話となる。

全編を通してスリリングな展開がうまいと思う。ちょっとづつ暴かれていく周りの人間関係が面白い。あなたはきっと騙されるというウリ文句があった手前、どういうオチだろうとか考えながら見てしまっていたがきっちりと騙された。普通ならこれをオチにするだろうと考えるところをフリに使い、見ている人間を裏切ってやろうとしているところが交換が持てる。落ちに含みをもたせているのも非常に良いと思う。

最近見た映画の中では1,2を争うほどの良策だと思う。ミステリー好きでまんまと騙されたいと思っている人がいるとすれば見てほしい作品だと思う。

よくある設定の全てを詰め込んだB級映画 – JUDGE/ジャッジ

見た。期待した通りのB級ホラー映画でなかなか良かった。

気絶している間に誘拐されて監禁された人たちが部屋に集められて目がさめるところから始まり、とりあえず暴れてみる。ちょっと落ち着いてなんで集まったか話し合うと7つの大罪が原因ではないかという話になるという安直ぶり。死んで欲しい人を投票で決めるというよくある内容に、最後の最後に談どんでん返しがあるという盛大なネタバレがパッケージに書いてある割にはそうでもないオチ。B級映画の要素がフルコースで素晴らしいと思う。

とりあえず、有村架純が可愛い。純粋そうな役で出ているところもなんか良い。最近兄貴キャラのようになっているが、清純派の可愛さを彼女は持っていると思う。ちょっと初な彼女を見れるだけでもこの作品を見る価値はあるのではなかろうか。というか、そこB級映画がすきじゃないのであればそこ以外見る価値は無いと思う。

アイドルが書いたという色眼鏡を外してもおもしろい – ピンクとグレー

読んだ。簡単にあらすじを書くと「日本の大スターの幼なじみが書いた暴露本」という話となる。

この本はジャニーズのアイドルが書いたものとして有名になったようだ。なったようだ、と書いているのは僕がこの本を知ったのは「アルコアンドピースのオールナイトニッポン」で平子さんが大絶賛をしていたから読みたくなっただけでジャニーズが書いているとかは知らなかった。後からどういう人が書いたのかを知ったわけだが、スケープゴートが書いたのでなければ好みの文章で話の内容も面白く非常にうまい。また、幼少期にとても中の良かった二人が芸能界に足を踏み込んでしまったばっかりに少しづつすれ違っていくリアルな二人の関係性はこの人だからこそ書けたのではなかろうか。

「開始62分の衝撃」とよくある衝撃があるというネタバレが帯に記載されていて何らかの仕掛けがあるんだろうと思いながら読んでいたが、僕はまんまと騙された。騙されたというかそうなるのかと驚愕したといったほうが適切な気がするが、話の流れ、テンポもよくアイドルとして活動しながらこれだけの文章がかけるとは才能に溢れる人なのだろう。

ただ一つだけ非常に気になる文章がある。「白いメダカは全ての光を嫌ったから白になった。それが嫌になって全てを吸収して透明になった」というようなエピソードが登場する。全ての光を吸収すれば透明じゃなくて黒になる。透明になるには光を吸収せずに透過しなければならない。こんな単純な間違いを校正されなかったのか、それとも作者がここのニュアンスを変えたくないから突っぱねたのか。あとがきで書いてある校正というのはこの部分だったのかとか妄想が止まらない。

人間とは記憶なのかと考えさせられる作品 – 記憶屋

読んだ。

望んだ記憶を消すことが出来ると言われている記憶屋。最初は都市伝説の類と考えていたが主人公の周りで不可解に記憶をなくす人間が出てきたことで記憶屋を調査しだす。少しづつ明らかになる記憶屋の存在とそれにまつわるエピソードを記載した作品

角川ホラーで出版されているがホラーではない。「記憶屋」という都市伝説的な物の怪が登場するが恐怖を感じるということは無いと思う。記憶を消されることでこれから先楽に生きていけるとすればそれは良いことなのだろうか?本作で登場するトラウマを記憶を消すことで対処するという方法は生きやすくなるのかもしれない。しかし、「記憶という小さな粒の積み重ねがその人を形作っている」という本作に登場する言葉を考えるとトラウマすらもその人を形作る大事な一つのピースだと考えることが出来るかもしれない。

話の流れも綺麗で、ホラーというより感動作として出版したほうが売れたんじゃなかろうかと思う。ホラーを期待して読むとがっかりしてしまうかもしれないが、都市伝説の物の怪が出てくる感動ミステリーとして読むと非常に面白い作品だと思う。最近読んだ中では一番おすすめしたい作品。

冷静で冷たい心を持ちながら惹きつけられる「優佳」という女性 – わたしたちが少女と呼ばれていた頃

読んだ。石持さんが描く優佳という女性の魅力を再認識させられた。

この本は「扉は閉ざされれたまま」で探偵役として登場した優佳が登場するシリーズの最新作である。今までは時間が少しづつ進んでいたのだが今作は高校生の優佳を描いた作品になる。優佳の少しの情報から全てを見透かす明晰な頭は高校生の頃でも光っており、今までの作品を読んでいるいないにかかわらず楽しめる作品だと思う。今までの作品は長編だったが本作は短編集になっているため隙間時間に読むことが出来るのもので「長い話はちょっと」と敬遠していた人も是非読んでみてほしい。

全てを見透かし、全てを手のひらの上で動かしてしまう優佳という女性は恐ろしくもありながら惹かれもする。まだ優佳シリーズを読んだことが無いのであれば本作品から読み出せば優佳という女性の魅力にとりつかれること請け合いの作品だと思う。

狂気と暴力とSEXが絡みあう園子温という人 – 冷たい熱帯魚

見た。狂気と暴力とSEXが絡みあう園子温監督らしい作品だと思う。

ざっくりあらすじを書くと「万引きをした娘を捕まえた店長に呼び出された熱帯魚店を営む父親。そこに現れる同業者の男がその場を取り持ってくれる。そこにそこから始まる父親と同業者の奇妙な主従関係」を描いた作品だと思う。

性と死と暴力は園子温監督の中で密接に関係していると考えているのであろうと思う。単純に暴力とグロテスクなシーンが非常に多く衝撃的な作品で見ていて思わず目をそむけてしまうシーンも非常に多い。最後のオチはなかなか衝撃的であっけにとられてしばらく固まってしまったほどだ。ストーリーとしてはなんとも言えないのだけど終わるまで目が離せない魅力がある作品だと思う。

懐かしきスクールカーストよ – しろいろの街の、その骨の体温の

読んだ。ざっくりとどういう本かと説明すると「うだつのあがらないスクールカーストの低い女の子と、スクールカーストに気づかない鈍感男性の淡い青春を描いた作品」だと思う。

若い頃ほど自分の周りが世界の全てで周りの評価が自分のすべてであるように錯覚してしまう。小学生・中学生におけるスクールカーストは絶対的であり上から下に関わることはあっても下から上に関わることなんてほぼなかった。目立つグループを横目で見ながら波風をあまり立てないように過ごしていた小さいころの心の揺れを数倍にして書いたらこんな文章になるんだろうと思ってしまう。

その人がその人であるというのはどういうことか – ふくわらい

読んだ。なんか禅というかなんというか不思議な作品だった。

この話は一人の福笑い好きの女の子が大人になるまでの話で西かなこさんらしさを感じられる本になっていると思う。読んでいると西かなこさんの語りかけている声が聞こえてきそうな文章が印象的な作品だった。

この本で描きたかったことというのは何なのだろうか。純真無垢で自分が思っていることをそのまま口に出してしまうような主人公は作者の生き写しの様に感じられる。人というのは周りの人が感じてくれるから人で「顔が」とかそういう俗な肉体に縛られたものではなく、そのへんに落ちている石をその人だと思えばその人だと感じることが出来るということを書きたかったのだろうか。それを上手く表現するために「ふくわらい」というものを題材として眼や鼻をあるべき市ではない部分に移動してもその人はその人であるということを書きたかったのだろうか。

良い文章だとは思うが私の力では読み取れなかった部分が多かったようなきがするので、もうちょっと歳をとってからもう一度読んでみたい。

伊坂節が非常に光る作品 – 残り全部バケーション

読んだ。久しぶりに伊坂節を感じるできた作品だと思う。

本作品はちょっと憎めない何でも屋の日常を記載した短編集なのだが小気味良くて読みやすい。やってることは当たり屋とか人さらいとか物騒なはずなのに、伊坂幸太郎という人間の手にかかればどんなに物騒な人でも憎めない人間味溢れる人に感じてしまうから不思議だ。

僕は伊坂幸太郎さんの作品が好きで文庫化されているものは大抵読んでいて バイバイ、ブラックバード (双葉文庫) が特に好きなのだけど、この作品が好きな人にはぜひ読んで欲しい。伊坂幸太郎らしい伏線の回収やテンポの良い文章といいらしさが詰まった作品だと思う。

最近の伊坂幸太郎さんの長編が間延び感を感じてしまって敬遠していたわけだけど、本作を読んで短編の切れ味の鋭さは健在でやはりこの人が書く作品は面白いと再認識できてよかった。作家は突き詰めていけばいくほど文章が鋭くなり、最終的には星新一のようなショートショートに行き着くのかもしれない。