極楽だけに「毒」がないのが残念 #極楽プリズン

読んだ。あまり毒が無いなと思った。

あらすじをざっくり書くと飲み屋の与太話だと思う。初めて入ったバーでたまたま隣りに座った男の与太話が延々続くわけだけど、この男の離す内容があまりにも突拍子もなさすぎて思わず引き込まれてしまう。脱獄自由で何をするのも自由な刑務所なんて刑務所の話なんて普通は信用できないけど、酒の肴として聴くには非常に面白いと思うし、もし僕がたまたま入ったバーの隣に座った人が同じような話をしてきたら続きが気になってしまうだろう。そういった意味では現実味があり、はなしてることは現実味がないというバランスが良いと思う。

僕は木下半太という作家が好きで、この人が書いた作品は何個か読んでいるのだけど本作ではこの人特有の「毒」が非常に薄かった。この人は人間の毒をコミカルなシチュエーションと性格でオブラートに包むのが非常に上手く、僕が好きな理由もそこにある。しかし本作では出てくる人間は最終的にいい人しかいないし終わり方もきれいになっている。設定の妙と大きな仕掛けは相変わらず素晴らしいと思うが、「毒」が好きな僕からすると少し残念な作品だった。これを読むなら「悪夢のエレベーター」とか「鈴木ごっこ」とかの方が木下半太らしく面白いと思う。きれいな話が好きな人なら読んでみても損はしない作品だと思う。