正常な自分が普通に押しつぶされて狂わされていっているとしたら – 消滅世界

読んだ。問題作と言われる所以も分かったし衝撃を受けた。

この話をざっくり言うと「人工授精が主の妊娠の手段となってSEXをしなくなったらどうなるのか?」を描いた作品だと思う。子供を作るためにSEXをする必要が無いので夫婦は一緒に暮らすだけの人となり、SEXは恋人とする。結婚するということは家族となるということで家族とSEXをするのは近親相姦となるというのはこじつけな気がしなくもないがなんとなくわからんでもない。出産は女性だけのものではなく男性も出来るようになったらどうなるのだろうか。真の意味での男女平等は体の性差が全くなくならないと無理だと僕は思っていて、出産は一番大きな体の違いなので男性の出産ができるようになった時点で真の意味での男女平等は訪れるのかもしれない。

この話で一番恐ろしいと思うのは主人公の感覚が少しづつ変わっていくところだと思う。少し変わっていた主人公が周りの普通に押しつぶされながら少しづつ変わっていく。普通に塗りつぶされていく感覚を狂っていくと表している部分も秀逸だと思う。普通というのは平均でありだれでも普通と外れている部分というのは持っている。その誰もが持っている普通では無い部分を無理やり普通へと合わせていくことで、人間は調和を保ち自分が生きやすいようにしているんだと思う。しかし普通は実は異常で自分だけが正常であったのに少しづつ普通の異常に狂わせられているのかもしれない。

村田紗耶香という作家は常識、普通というものを常に疑って生きているのだろう。特に性に関して常に普通を疑っていて、なぜみんなは普通に従って生きていけるのかという疑問を抱き続けているように見える。普通に従わずに生きるのはさぞ生きづらいのだろうが、もしかしたら村田紗耶香が正常で普通に生きている大多数の人間が異常なのかもしれない。