文章のテンポって大事だと思う – 彼女は存在しない

読んだ。ただひたすら長かった。

ざっくりあらすじを書くと、「2重人格の少女とカップルが出会って色々起こる話」になるんだけど、これが非常に長い。長い。それ以外感想が出ないぐらい長い。タイトルからなんとなくこんな話なんだろうなと想像して、2重人格と出てきて非常に納得して物語が加速するのかと見せかけずっとアイドリングで進んでいるような印象を受ける。そのくせ唐突に人が死んだりするので「そこはもうちょっとスピード落とせよ!」と言いたくなる。オチがどうなるのか気になって最後まで読み進めたわけだけど、読み終わった感想も「非常に長い」と言うものだった。僕の好みとはだいぶ違ったので同じ感性の人にはあまりおすすめできないかなと思う。

題名が絶妙に効いている – 神様の裏の顔

読んだ。帯に好きな作家がおすすめしてると書かれていたので読んだが、おすすめしたくなる気持ちがわかった。

この本のあらすじをざっくり書くと、素晴らしい先生の葬式に出席した人が先生の思い出を一人称で語っていく話となる。あの先生にこんなことをしてもらったから俺(私)は助かったという回想が多く、「神様の裏の顔」という題名と神様のように素晴らしい故人との回想というバレバレすぎる伏線からの立て続けに暴かれる裏の顔が非常にテンポが良い。大体こんな感じのオチなのだろうと想像しながら呼んでいたわけだが、だいたい想像通りのオチであるにもかかわらず非常に面白く読めるのは素晴らしいの一言に尽きる。みんなで「神様の裏の顔」について話し合っているシーンの人間模様の移り変わりは圧巻だと思う。

まだ1月なのでこれから色々な本をよむことになりそうだけど、今年はこれ以上に面白いと思える本には出会わないのかもしれない。そう思えるほどに面白く好みな本だった。あとがきを読むと元々この人はお笑い芸人らしい。ピースの又吉とか劇団ひとりとか芸人さんは本を書くのが上手い印象が強い。コントのネタは小説を書いているようなものだろうから、情景描写の技術さえあればコント芸人というのは作家に転校できるのかもしれない。

普通は脆い – コンビニ人間

読んだ。相変わらずな感じで面白かった。

この本のあらすじをざっくり書くと普通じゃない人がコンビニでバイトすることで普通を演じる話だと思う。村田紗耶香という作家はいつでも普通というのを疑って生きているのだろう。みんなが普通にやってることが彼女にとっては普通ではないのだろう。彼女が提示してくれるあなたの普通は普通じゃないのかもしれないという問題提起は非常に面白い。現に一昔前の学校を卒業して就職して結婚して子供を産んで家を建てて、みたいな普通の生活は今では既に普通ではない。現代にはびこっている普通は50年ぐらいで出来上がった物がほとんどであるという。テレビは普通だろうけど50年前は存在していなかった。携帯電はも普通だけど50年前には存在していない。スマホなんて10年前ですら存在していないが今では普通だ。それぐらい普通というのは揺らぎやすく脆いもののはずなのに、みんな普通にすがって生きているというのは滑稽なのだろう。

昔は集団で生きていく必要があったから普通である必要が非常に強かった。しかし、最近は普通である必要性はどんどん低くなっていく。だからこそみんなが普通というものに疑問を持ち出し、自分が考える普通は正しいかを知りたがり、その結果このような本が売れているのだろう。普通なんてたんなる基準にすぎない。平均値というだけだ。そのことをちゃんと認識しながらいきていったほうがよいのだろう。

さっくり読めるミステリー短編集 – 二歩前を歩く

読んだ。文字がでかくさっくり読み終わってしまった。

この本は何らかの超常現象に悩まされている人がその原因を解明していく流れの話が複数入った短編集になる。石持浅海さんらしくすべての話に華麗なオチがついているのがすばらしい。本筋はすべて超常現象なので一般的に幽霊と呼ばれるものがすべての話に出てくるのだけど怖さというものはない。超常現象というものは現代科学で解明されていないというだけで、事象として考えれば単なる出来事として捉えることが出来るので怖いと感じなくなるのだろう。理系の冷めた分析が終始出てくるので幽霊物が苦手でもすんなり読めるんじゃなかろうか。

軽く読める短編集を探しているなら読んでみて損はないと思う。

ポーカーを知らない人にはちょっとつらいかもしれない – 女王のポーカー

読んだ。続きものだけど続きを読むことは無いかなと思った。

ざっくりあらすじを言うとポーカーが流行った学校で王者として君臨するポーカーサークルを仲間を集める話になると思う。本作は続き物なようで、今作は人を集めるところまでで終わっており、次回で実際の戦いが始まるのだと思われる。この本で一番つらいのはポーカーのルールについて説明しないと話の面白さが伝わらない部分だと思う。ポーカーは5枚で役を作るってどっちが強いかで戦うというのが基本で、僕がやったことがあるのは、配られたカードを何回か交換して薬を作って戦うという程度のものである。しかし、本作品で行われているポーカーはテキサスホールデムというルールで全員で共通で使えるカードと自分だけが使えるカードで薬を作って戦うというものだ。僕は大体の役はわかるし大雑把なルールが分かっている状態で読んだのだが、ルールはわかるが熱くなるポイントというのがいまいち伝わらない。伝わらせるために長々とルールや確率や対戦スタイルについて書いているが理解するのが面倒になってくる。いってることはわかるのだがすんなり頭に入ってこないのは僕の理解力がたりないからなのだろうか。

さらに、いきなり始まる探偵者のようなストーリーなど、携帯小説で場当たり的に書いているような印象を受けてしまい、続きを読んでみようかという気持ちは起きなかった。これは僕がポーカーのルールを知らなかったからなのかもしれない。アカギという麻雀漫画を麻雀のルールを知らない人が読んでも理解できないように、この白をここできるのはどうなんだ!?みたいなセオリーを無視した動きというのはセオリーがわかっていないと面白くないのは当然だろう。一度ポーカーをやってからもう一度読めばいいのかもしれないが文章もあまり好みではなかった。好きな人は好きなのかもしれないが万人におすすめはできない本だと思う。

仮面病棟から大幅のパワーアップに驚愕 – 時限病棟

読んだ。期待せずに読んだけど思った以上に面白かった。

ざっくりあらすじを書くと、目が覚めると知らないところに監禁されていてそこから脱出する話になるのだけど、最近流行りのリアル脱出ゲームの体をとりながら進んでいるところが他と比べると新しい。病院で目を覚ました人たちがなぜ監禁されているのかを考えながら脱出ゲームさながらにお題をときながら脱出を試みていくわけだが、脱出ゲームというパッケージがあるおかげでテンポよく話が進んでいくので非常に読みやすく面白い。また、オチの付け方も非常に好みでなかなかよい。

この本は仮面病棟の続きの話になるのだが、繋がりはあまりないので先に読んでおいたほうが良いというわけでもない。仮面病棟はリンク先でも書いているが僕としてはひねりが足りずイマイチだったので、その続編となるこの本はあまりそそられなかったわけだけど前作とは比べ物にならないぐらい好みだった。本作が面白かったから、その前の仮面病棟を・・・と思って読んでしまうと無駄にハードルが上がりすぎてがっかりするかもしれないので注意していただきたい。

息もつかせぬ展開で一気に読んでしまう – 緋い猫

読んだ。続きが気になり一気に読んでしまった。

どういう話かをざっくりかくと、箱入りのお嬢様が好きになった反政府組織の人が疾走したので探しに行く話なんだけど息もつかせぬ展開の連続で非常に面白かった。「その女アレックス」とか「ゴーンガール」とかが好きな人なら楽しく読めると思う。ぐろいというか鬱になるような描写が結構出てくるのでそういうのが苦手な人はきついかもしれないが非常に面白いと思うので一度読んでみてもらいたい。

実際に手で触れそうなパラレルワールドがそこにある – 五分後の世界

"悪意とこだわりの演出術"で面白いということが買いてあった記憶があるので読んだ。

どういう話かをざっくりいうとパラレルワールドに行ってしまった男の話となるわけだけど本当にその世界が存在するのではないのかと思わせるほどの文章だった。村上龍の書いた本を初めて読んだわけだがすごく鬼気迫る描画で引き込む力が強い作家だなと言う印象だった。本作のパラレルワールドは第二次世界大戦で日本が降伏せずに戦争が続いていたら?という世界が描かれており、その世界では未だに戦争は起こっているし日本と戦争は密接に結びついている。僕は実際に戦争というものを体験したことはないので想像しかできないし、村上龍も年齢的に戦争を体験している人ではないはずなのだがそこにあるように描く力というのはなんなのだろう。

戦争を知らずに僕は生まれてこれから先も戦争を知らずに生きていきたいし、子どもたちにも戦争という体験をしてほしくない。この本をよむことで戦争というのはどういうものなのか?ということは僕には感じることはできなかった。生々しい描画ではあるが、戦争と日本を美化して書いているような気がしてあまり好きにはなれない。実際に戦争をするとなれば日本を好きにならなければ戦えないだろうし、日本という国で育っていくということを考え直さないといけないのだろう。日本を美化しているという感想を今は持ったが、そのときには別の感想を持つのだろうか。永遠にそんな時期が来ないことを祈りたいものだ。

よくある話の力はあなどれない – 不死症

読んだ。なんともない話なのになぜか一気に読んでしまった。

ざっくりした内容は噛まれると感染するゾンビから逃げながら助かる方法を探すっていうよくあるお話。爆発のショックで記憶を失っている主人公とか、手を前に出して襲ってくるゾンビとか、噛まれたらゾンビになってしまうとか、よくある設定がこれでもかと押し込まれた本作品なわけだが、ありきたりだからこそ理解しやすく読みやすいのかもしれない。感染症でゾンビになっていくというのはよくあるけど「ゾンビから心がこもったプレゼントを貰ったら感染する」とかいう独自の設定を盛り込まれるとそれを理解することに力を使ってしまうせいで話が頭に入ってきにくい。ありきたりな設定にはありきたりな設定なりのいいところがあるんだと思う。

ありきたりな設定でありきたりな動きをしてありきたりに動いていく主人公達だけどラストに向かって少しづつありきたりからずれていきながらわかりやすい落ちへと持っていく流れは非常に素晴らしく、ここが一気に読ませてしまう力となっているのかと思う。ゾンビが出てくる話は石を投げればぶつかるほど巷に溢れている中で売れる本というだけの力はあると思う。

小気味良いミステリが詰まった短編集 – そして名探偵は生まれた

読んだ。小気味の良い短編集で通勤のお供にはぴったりな一冊だった。

この本は4つの短編集で、どの短編も読み応えがあり非常に面白い。なんとなくこういうことなのかなという読者の予想をきっちりと裏切り予想外の結末へと持っていく手腕は素晴らしいと思う。

タイトルにもなっている「そして名探偵は生まれた」という話も短編の中の一つとなる。ざっというと小説に出てくるような名探偵と推理小説オタクの助手が旅行先で巻き込まれる殺人事件の話となり、これだけきくとよくある単純な話に聞こえる。コナンくんや金田一くんと旅先であったら遺書を書いておいたほうがいいと言われるほど名探偵+旅行=殺人事件という数式は成り立ちやすい。しかしこの作品がちょっと違うのはこの名探偵は非常にやる気がない。殺人事件が起きたと助手が言っても一向に解決しようと動かずに寝たままなのである。その理由は今まで自分が解決した難事件を本にしようとしたせいで事件の当事者から訴えられたせいで、事件を解決しても何もいいことがないと悟っているからだ。このなんとも微妙な名探偵と殺人事件を絡ませて読者の予想を裏切る結末を作り上げる手腕は素晴らしいと思う。

この作品だけでもこの本を買う価値があるとは思うが、他の作品も負けず劣らず素晴らしい。僕としては「宗教家が爆破テロを起こして島に逃げる」という話が好みだった。極限状態の人間模様のドロドロな中にも虎視眈々と色々考えている人間がいるというのがなんとも人間臭くて良いと思う。