苦手だった作家が好きになった – リバース

読んだ。今までに読んだ本の中でベスト5に入るぐらい衝撃を受けた。

ざっくりあらすじを書くと、学生時代に犯した過ちを告発された主人公が真相を探す物語になると思う。うだつのあがらない主人公が真相を探してもがいている様は明日に向かって進もうとしている人間の様に見えて非常に共感できる。最後に伏線を回収していくのは気持ちいいしなによりオチがすごい。そんなばかなっと読む手が思わず震えた。読了後の気持ち悪さはひどいわけだがそれを差し引いても呼んで面白かったと思える。リバースというタイトルの意味が最初はわからなかったが、妻と話をしていて「主人公は最初に戻ったんだよ」と言われて腑に落ちた。なるほど。彼はずっともがき続けるしかないのだろう。

この話には救いなんて無い。もがき続けた結果わかったことはじっと耐えるしか無いということなのだろう。すべての事柄が空想で終わっているはずなのにここまで気持ちよく、気持ち悪く終りを迎える本を僕は知らない。ぜひとも読んでもらいたい一冊だと思う。

あらすじからしてイカれている – 殺人出産

読んだ。村田紗耶香らしい本だと思った。

ざっくりあらすじを書くと「10人子供を産むと1人殺すことが出来る権利を得ることが出来る世界」を描いた本になる。あらすじを読んだだけでイカれていると思うかもしれないが、ちゃんと本の中身もイカれている。村田紗耶香らしく問題作と題される作品になるのだろう。村田紗耶香という作家は性と生について常々疑問を持っているのだろう。不倫がいけないといか殺人が行けないというのは現代社会の常識であり、常識が変われば全てが許されてもおかしくないのである。この現代社会という枠組みをちょっとずらして考える事ができてしまうがゆえに、普通の人が考えもしない疑問を投げかけてくる文章を量産し続けている。

村田紗耶香という人が非常に気になり、この人が書いた本を色々と読んで生きたわけだが、最終的に息つくるところは「生と性」に対する疑問以外無い気がする。あなたが思っている常識はみんなが常識だと思っているから常識なだけであって、ちょっとずらしてみると常識じゃないのかもしれないということを突きつけられるのは非常に面白いのだけれど、この人が「生と性」から抜けた本を書くことはあるのだろうか。もし書くことがあるのであれば読んでみたいが、それまではお腹いっぱいなので読まなくても良いかなと思えてきた。それで言うと「コンビニ人間」は「生と性」がテーマではないからこそ直木賞を取ることができたのかもしれない。タブー視されている部分を書いてくれる作家というのは希少価値が高いのだろうが、一般受けはしないのだろうな。

複数の謎が見事に解けていく – がん消滅の罠 完全寛解の謎

読んだ。ガンというものを学ぶ上でも良いと思った。

ざっくりあらすじを言うと、「末期がん患者と診断されたことによりガン保険の払い出しを受けた人間が立て続けに完治(完全寛解)したことを不審に思った保険屋が、なにか不正があったのかを調査していく物語」となると思う。なぜ末期がん患者のガンは消滅したのか?もし有効な治療法を確立したのであればなぜその治療法を世間に発表しないのか?などの疑問が少しづつわかっていく過程は面白い。理系の考え方がとして、ありえないことが起こったのであれば、一つづつ前提から疑ってかかる必要があるというのはすごく納得できる。

なにか突飛な話なのかと思いきや、たしかに現実的に起こりうるのではないかと考え扠せられることがこの本の一番の怖さであり面白さではないのだろうか。何となくこうなるだろうと思っていた結末とは違ったのだが、してやられたと思うほどではなく現実に起こりうるラインなことに市松の恐怖を覚えてしまう。この本では複数の謎が少しづつわかっていく様になっており、最後の最後まで謎が残っていく。しかし、最後の謎解きが一番インパクトが低かったのがちょっと残念だった。それいる?って思わず思ってしまうほどだったのだが、他の人はどう思ったのだろう。気になるところではある。

ツチヤタカユキはきっとやってる – 笑いのカイブツ

読んだ。圧倒的な熱量と圧倒的な絶望が記されていた。

僕は5年ぐらい「オードリーのオールナイトニッポン」を聞いているリトルトゥースなのだけど、この番組を聞いている人なら知っているであろう「ツチヤタカユキ」が本を出したと聞いたら読まずにはいられないだろう。あの、ツチヤタカユキが本を書いているのだ。若林さんが話している内容しかしらないが、一日にボケを2000個ひらめき、隣を歩いているだけで注意をされ、渋谷駅の岡本太郎の絵を一日中見ていたという変人。これが僕のツチヤタカユキのイメージだったがこの本を読んでもその印象は変わらなかった。変わらないというより、僕が持っていた印象を更に凝縮して凝縮して凝縮したものがツチヤタカユキなのだと感じた。

この本に書いてあるのは圧倒的な絶望だ。お笑いに狂い、お笑いのためだけに自分の能力を特価させ、お笑いのためだけに仕事をしていた人間が、芸能界というお笑いのトップが集まるであろう場所で、人間関係不得意という理由で排除される絶望がただただ記されている。何かを極めるためには何かを擦れるしか無い。ツチヤタカユキはお笑いを極めるために人間関係を捨てたのだろうが、その捨てた人間関係のせいでことごとく失敗していき、能力で秀でれば勝てるであろうお笑いの世界でも捨てた人間関係で排除される。能力を上げるために捨てたもののせいで、上がった能力が評価されないというのは皮肉以外何者でもない。お笑い以外の全てをすてて脇目もふらず進んだせいで気づいたときには後戻りできず、不必要だと削ったものを使って自分よりも能力が低いであろう人間が評価されていくのを見ていくのは絶望以外ないのだろう。

この本に書いていることは誰しもが少なからず感じることだと思う。自分が得意だと思っていたことで自分は天才だと浮かれていたら、世の中に出ればそれは普通より少しだけ上なだけで普通の範囲を出ていないということが少しづつわかってくる。少しづつ少しづつ自分は普通だと認めざるえない状況になっていくのだけれど、それを認めるということは自分のアイデンティティーを否定するということと同義で、自分自信が否定されていくような感覚を覚えていく。普通の人間なら得意と思っていることは多数に分かれていて、一つが否定されたところで壊れはしない。しかしツチヤタカユキという男は全てをお笑いにかけていたのだ。そのお笑いというもので認められなければ、いろいろな理由をつけて自分の能力が低いわけではなく自分を評価しない世の中がおかしいと考えるのは至極当然のことなのだが、少しづつ「本当は世の中が認めないのがおかしいのではなく、自分の能力が足りないだけではないのか?」という疑問がわいてくるのだろう。それを押させつけて押さえつけていたものがはじけ飛んだ時がツチヤタカユキが絶望する時なのだと思う。

ただ、この本で度々出てくるわけだが、ツチヤタカユキは自殺する時はお笑いの教科書を作って死んでいくと言っている。お笑いの教科書的なものをブログでもなんでもいいから公表してからお笑いをやめると書いているのだ。僕の耳にはまだツチヤタカユキがブログを書いたとか、お笑いの教科書を書いたとかいう話は届いていない。ということはまだツチヤタカユキは絶望していないにも関わらずこの本を書いたということになるわけだ。そんなツチヤタカユキに僕はこう言いたい。

ツチヤタカユキ、お前やってんな!

天才的な凡人が紡ぐ恋の話 – ハニービターハニー

読んだ。文章が上手だなと思った。

僕は「朝井リョウと加藤千恵のオールナイトニッポン」で加藤千恵という人を知って、それから「真夜中のニャーゴ」をちょいちょいみるようになったぐらいの加藤千恵好きなんだけれど、今までずっとこの人が書いた本を呼んだことはなかった。「真夜中のニャーゴ」では知り合いの作家さんが出てきておすすめの本を紹介したりとかするような番組でこの番組に出てくる人の本はたいてい読んだことがあったわけだけど、なぜか加藤千恵の本だけは読んだことがなかった。一番大きな理由に表紙が少女漫画のようで、あらすじも少女漫画のようだからあまり好みではないのだろうというのがあるんだけれど、もう一つの理由として加藤千恵は普通だっていうのがある。作家さんは変わった人が多くて色々な人の話を聞いていると価値観が非常に変わっているので、この人が紡ぎ出す話はどんなものだろうと作家から興味がわいて読んだ本は結構ある。しかし、加藤千恵は良くも悪くも普通だと思う。なんというかバランス感覚が非常に高くて誰がどうしたら怒るとか、そういう観察眼は非常に優れているのだけれど、そこから独自の価値観を生み出すというわけではなく普通なのだ。バランスが崩れた人たちの中にいるにも関わらずバランスを取り続けているのはすごいわけだけれど、そこから出てくるものは標準の域を出ず、わかりやすくすっきりと入ってくる文章を書くんだろうと思うとなかなか手が出なかったというのがある。

そしていい加減読もうとこの本を手にとって見たわけだけれど読んだあとも印象は変わらなかった。非常にきれいな文章で非常にうまく描写をしていてうまいこと物語を紡いでいるけれども標準の枠を出ないというつらさ。この本は「ハニービターハニー」という名前どおり恋愛の甘さと苦さが同居する瞬間を描いている短編集だと思うんだけれど恋愛といえば苦さと甘さが同居するという標準的な考えと苦さと甘さの完璧なまでの混ぜ合わせ方。非常に標準で誰もが理解しやすく天才的なバランス感覚で書かれていて良く言えば理解しやすくすんなり読めるけれど悪くいうと面白みが少ないといういかにも加藤千恵っぽい本だなと思った。僕は熱量がある本が好きなのであまり好みではなかったが好きな人からは圧倒的に好かれる本なのではなかろうか。恋愛といえば甘さと苦さという普通を味わいたければおすすめできる一冊だと思う。

名探偵赤ちゃんの誕生 – こんにちは刑事ちゃん

読んだ。期待値が高すぎたので、それを超えるほどではなかった。

この本のあらすじをざっくり書くと「殉職した刑事が部下の子供に生まれ変わって事件を解決する」という話になる。生まれ変わりの話で起こりうるであろう事件を全部突っ込んで話を作っているようでなかなか面白い。短編集なので読みやすく、きちんとすべての話に落ちがついているのが好印象。よくある話とよくある設定を詰め込んでいる割に、全部の話で面白いオチを付けているのは流石だなと感じた。しかし、前作の「神様の裏の顔」が面白すぎて、それを超える、もしくはそれとはるであろう面白さを求めて読んでしまったせいで少し物足りなさを感じてしまった。物足りなさを感じた上でも面白さを感じることができたので、何も知らずに読めば面白いのではなかろうかとは思う。

文章のテンポって大事だと思う – 彼女は存在しない

読んだ。ただひたすら長かった。

ざっくりあらすじを書くと、「2重人格の少女とカップルが出会って色々起こる話」になるんだけど、これが非常に長い。長い。それ以外感想が出ないぐらい長い。タイトルからなんとなくこんな話なんだろうなと想像して、2重人格と出てきて非常に納得して物語が加速するのかと見せかけずっとアイドリングで進んでいるような印象を受ける。そのくせ唐突に人が死んだりするので「そこはもうちょっとスピード落とせよ!」と言いたくなる。オチがどうなるのか気になって最後まで読み進めたわけだけど、読み終わった感想も「非常に長い」と言うものだった。僕の好みとはだいぶ違ったので同じ感性の人にはあまりおすすめできないかなと思う。

題名が絶妙に効いている – 神様の裏の顔

読んだ。帯に好きな作家がおすすめしてると書かれていたので読んだが、おすすめしたくなる気持ちがわかった。

この本のあらすじをざっくり書くと、素晴らしい先生の葬式に出席した人が先生の思い出を一人称で語っていく話となる。あの先生にこんなことをしてもらったから俺(私)は助かったという回想が多く、「神様の裏の顔」という題名と神様のように素晴らしい故人との回想というバレバレすぎる伏線からの立て続けに暴かれる裏の顔が非常にテンポが良い。大体こんな感じのオチなのだろうと想像しながら呼んでいたわけだが、だいたい想像通りのオチであるにもかかわらず非常に面白く読めるのは素晴らしいの一言に尽きる。みんなで「神様の裏の顔」について話し合っているシーンの人間模様の移り変わりは圧巻だと思う。

まだ1月なのでこれから色々な本をよむことになりそうだけど、今年はこれ以上に面白いと思える本には出会わないのかもしれない。そう思えるほどに面白く好みな本だった。あとがきを読むと元々この人はお笑い芸人らしい。ピースの又吉とか劇団ひとりとか芸人さんは本を書くのが上手い印象が強い。コントのネタは小説を書いているようなものだろうから、情景描写の技術さえあればコント芸人というのは作家に転校できるのかもしれない。

普通は脆い – コンビニ人間

読んだ。相変わらずな感じで面白かった。

この本のあらすじをざっくり書くと普通じゃない人がコンビニでバイトすることで普通を演じる話だと思う。村田紗耶香という作家はいつでも普通というのを疑って生きているのだろう。みんなが普通にやってることが彼女にとっては普通ではないのだろう。彼女が提示してくれるあなたの普通は普通じゃないのかもしれないという問題提起は非常に面白い。現に一昔前の学校を卒業して就職して結婚して子供を産んで家を建てて、みたいな普通の生活は今では既に普通ではない。現代にはびこっている普通は50年ぐらいで出来上がった物がほとんどであるという。テレビは普通だろうけど50年前は存在していなかった。携帯電はも普通だけど50年前には存在していない。スマホなんて10年前ですら存在していないが今では普通だ。それぐらい普通というのは揺らぎやすく脆いもののはずなのに、みんな普通にすがって生きているというのは滑稽なのだろう。

昔は集団で生きていく必要があったから普通である必要が非常に強かった。しかし、最近は普通である必要性はどんどん低くなっていく。だからこそみんなが普通というものに疑問を持ち出し、自分が考える普通は正しいかを知りたがり、その結果このような本が売れているのだろう。普通なんてたんなる基準にすぎない。平均値というだけだ。そのことをちゃんと認識しながらいきていったほうがよいのだろう。

さっくり読めるミステリー短編集 – 二歩前を歩く

読んだ。文字がでかくさっくり読み終わってしまった。

この本は何らかの超常現象に悩まされている人がその原因を解明していく流れの話が複数入った短編集になる。石持浅海さんらしくすべての話に華麗なオチがついているのがすばらしい。本筋はすべて超常現象なので一般的に幽霊と呼ばれるものがすべての話に出てくるのだけど怖さというものはない。超常現象というものは現代科学で解明されていないというだけで、事象として考えれば単なる出来事として捉えることが出来るので怖いと感じなくなるのだろう。理系の冷めた分析が終始出てくるので幽霊物が苦手でもすんなり読めるんじゃなかろうか。

軽く読める短編集を探しているなら読んでみて損はないと思う。