天才的な凡人が紡ぐ恋の話 – ハニービターハニー

読んだ。文章が上手だなと思った。

僕は「朝井リョウと加藤千恵のオールナイトニッポン」で加藤千恵という人を知って、それから「真夜中のニャーゴ」をちょいちょいみるようになったぐらいの加藤千恵好きなんだけれど、今までずっとこの人が書いた本を呼んだことはなかった。「真夜中のニャーゴ」では知り合いの作家さんが出てきておすすめの本を紹介したりとかするような番組でこの番組に出てくる人の本はたいてい読んだことがあったわけだけど、なぜか加藤千恵の本だけは読んだことがなかった。一番大きな理由に表紙が少女漫画のようで、あらすじも少女漫画のようだからあまり好みではないのだろうというのがあるんだけれど、もう一つの理由として加藤千恵は普通だっていうのがある。作家さんは変わった人が多くて色々な人の話を聞いていると価値観が非常に変わっているので、この人が紡ぎ出す話はどんなものだろうと作家から興味がわいて読んだ本は結構ある。しかし、加藤千恵は良くも悪くも普通だと思う。なんというかバランス感覚が非常に高くて誰がどうしたら怒るとか、そういう観察眼は非常に優れているのだけれど、そこから独自の価値観を生み出すというわけではなく普通なのだ。バランスが崩れた人たちの中にいるにも関わらずバランスを取り続けているのはすごいわけだけれど、そこから出てくるものは標準の域を出ず、わかりやすくすっきりと入ってくる文章を書くんだろうと思うとなかなか手が出なかったというのがある。

そしていい加減読もうとこの本を手にとって見たわけだけれど読んだあとも印象は変わらなかった。非常にきれいな文章で非常にうまく描写をしていてうまいこと物語を紡いでいるけれども標準の枠を出ないというつらさ。この本は「ハニービターハニー」という名前どおり恋愛の甘さと苦さが同居する瞬間を描いている短編集だと思うんだけれど恋愛といえば苦さと甘さが同居するという標準的な考えと苦さと甘さの完璧なまでの混ぜ合わせ方。非常に標準で誰もが理解しやすく天才的なバランス感覚で書かれていて良く言えば理解しやすくすんなり読めるけれど悪くいうと面白みが少ないといういかにも加藤千恵っぽい本だなと思った。僕は熱量がある本が好きなのであまり好みではなかったが好きな人からは圧倒的に好かれる本なのではなかろうか。恋愛といえば甘さと苦さという普通を味わいたければおすすめできる一冊だと思う。