リライトの続編達 – リヴィジョン / リアクト / リライブ


リライトを読んで、続きということで結末が気になって読んだ。結果としてごちゃごちゃしすぎて作者の自己満足感が強い印象を受けた。

続編たちはそれぞれ大雑把に書くとこんな感じになる

  • リビジョン:過去を見ることが出来る鏡を持っている女の人の話
  • リアクト:リライトを別目線で書いた話
  • リライブ:輪廻転生を繰り返す女の話

全てがリライトに絡んでいて、想像力を掻き立てられる話に仕上がっている風だが、なんとも気持ち悪い。最後の終わり方のブラックさと腑に落ちなさが非常にすごい。

この話達でなにがわかりにくさを冗長しているかというと、タイムパラドックスの定義だと思う。現実世界では起こりえないこの現象を頑張って説明しようとしているがいまいちわかりにくい。例えば「ボールを投げたら落ちてくる」とか、「包丁で刺されたら痛い」とか現実で起きうることであれば経験したことはなくてもなんとなく理解できる。しかし、タイムパラドックスは違う。なんとかくの想像で、過去で自分の親を殺すと自分が存在しなくなるという過去を改変すると未来と繋がるというのはなんとなく想像できるのだが、今作のパラドックスの設定である「未来で起こっていることは絶対に起こるので起こると確定しているものを阻止しようとすると何かが起きる」というのざっくりしすぎていてよくわからない。すぐに地震が起こるし、そもそも確定したというのはどういう状態を表しているのかがよくわからない。そこがふわっとしている状態で話を進めているので最終的にもやもやして終わってしまったが僕よりも理解力が高い人間が読めば全く別の印象を持つのかもしれない。

タイムパラドックスと言われるとバタフライ・エフェクトという言葉がよく効かれる。蝶が羽ばたいた空気だけでもパラドックスが起こると言われているのにこれだけ色々なことをやって、それを全て伏線として回収しようとするのは無理があるのではないだろうか。あとがきを読んだ感じではすべての話の原型がきっちりと決まっている状態で3作品を書いているわけではなさそうだ。その状態でここまでまとめた技術には感服するが頑張って読んだ割に読了後のすっきり感が少ないのが残念。もうちょっと短くてもいいのですっきりとする話が好きな僕にはちょっと重すぎる作品だった。

ブラックな時をかける少女 – リライト

読んだ。読了感が悪くなんとも言えない気分になった。

話はよくあるタイムパラドックスを扱った話で、現在と過去の2つのシーンが交互に入れ替わりながら話が進む。過去の自分が現在にタイムスリップして行ったはずのことを現在の自分には起こらなかったことから話は始まり「なぜタイムパラドックスが起こったのか?」という疑問を解決していく話となる。こう書くとよくある話になるのだが、最終的に全てがわかった時の驚愕とすっきりしないむかつき感は秀逸だと思う。

この話は4部作となっているらしくこれからその先の3つを読んでみたくなる程度には面白く興味をそそられる話であると思う。しかし、乾くるみさんの本を読んだ後のような読了感の悪さが嫌いな人は読まないほうが良いのではないかと思う。現実では綺麗に終わる話というのはあまり存在しないのだから、本の中でぐらい全ての人間が救われるラストというものを読んでみたいという気持ちもわかるので、そういった人間の人には絶対にお勧めできない本だと思う。しかし、その類の話を苦手としない人間であれば読んで見る価値はあると思う。ぜひとも読了感の感じの悪さというのを感じてほしい。

何も予備知識を入れずに読んで欲しい一冊 – 去年の冬、きみと別れ

読んだ。読み進める手を止めることができずに一気に読んでしまった。

話をざっくり言うと死刑囚についての本を書くための取材した資料をまとめたものを本にしたものとなる。死刑囚はなぜ殺人を犯したのか?調査している人間はなぜ死刑囚の本を書こうとしているのか?この2つの疑問を軸として息もつかせぬ展開が繰り広げられていく。この2つの疑問が解決した時に息を呑まない人間はいないと思う。展開のスリリングさもさることながらこの落ちの付け方の旨さは流石だと思う。

中村文則という作家を僕が知ったのは「教団X」になるわけだが、あの本は哲学めいていて読んだ後にこれから先のことを考えさせられる本であったが、この本は素直に面白くエンターテイメント性が高い本だと思う。一度読み終わった後にもう一度読んでみるとさらに味わい深くなる。読めば読むほど面白くなるスルメみたいな本なのかもしれない。

あらすじが良いだけにちょっと残念 – ランドリー

読んだ。設定は面白いのになんか拍子抜けだった。

ざっくりあらすじを書くと自己で記憶障害になった男の子が見張りの仕事をしているコインランドリーとそこに来る人との交わりの話となる。本来はいらないであろうコインランドリーの見張りという仕事と、いろいろな人が来るであろうコインランドリーという場がうまいこと絡み合っている面白い本を期待して読んだわけだが、途中からコインランドリーから場面は移動するしオチは唐突だしなんか非常に拍子抜けだった。語り部として一人称で記載している部分が上手く書き分けられていたので、そこに集中してしまって話の内容がお座なりになってしまった気がする。

場を作る力と文章力が良いだけにもうちょっと面白い文章になって良さそうなんだけど、なぜこうなってしまったんだろう。他の本もこんな感じなのかとこの人がかいた他の本に興味をそそられるといえばそそられる作品だと思う。

正常な自分が普通に押しつぶされて狂わされていっているとしたら – 消滅世界

読んだ。問題作と言われる所以も分かったし衝撃を受けた。

この話をざっくり言うと「人工授精が主の妊娠の手段となってSEXをしなくなったらどうなるのか?」を描いた作品だと思う。子供を作るためにSEXをする必要が無いので夫婦は一緒に暮らすだけの人となり、SEXは恋人とする。結婚するということは家族となるということで家族とSEXをするのは近親相姦となるというのはこじつけな気がしなくもないがなんとなくわからんでもない。出産は女性だけのものではなく男性も出来るようになったらどうなるのだろうか。真の意味での男女平等は体の性差が全くなくならないと無理だと僕は思っていて、出産は一番大きな体の違いなので男性の出産ができるようになった時点で真の意味での男女平等は訪れるのかもしれない。

この話で一番恐ろしいと思うのは主人公の感覚が少しづつ変わっていくところだと思う。少し変わっていた主人公が周りの普通に押しつぶされながら少しづつ変わっていく。普通に塗りつぶされていく感覚を狂っていくと表している部分も秀逸だと思う。普通というのは平均でありだれでも普通と外れている部分というのは持っている。その誰もが持っている普通では無い部分を無理やり普通へと合わせていくことで、人間は調和を保ち自分が生きやすいようにしているんだと思う。しかし普通は実は異常で自分だけが正常であったのに少しづつ普通の異常に狂わせられているのかもしれない。

村田紗耶香という作家は常識、普通というものを常に疑って生きているのだろう。特に性に関して常に普通を疑っていて、なぜみんなは普通に従って生きていけるのかという疑問を抱き続けているように見える。普通に従わずに生きるのはさぞ生きづらいのだろうが、もしかしたら村田紗耶香が正常で普通に生きている大多数の人間が異常なのかもしれない。

その設定と結末に脱帽 – 鈴木ごっこ

読んだ。木下半太ワールドが全開の面白い作品だと思う。

話の大まかな内容は1年間鈴木として過ごすことを条件に借金をチャラにするために集められた一家を描いた作品となる。僕はこの突飛な内容に惹かれて思わず買ってしまったが買ってよかったと思う。木下半太さんが書いた本だというのは読み終わってから知ったわけだが言われてみればらしい作品だと思う。木下半太という作家さんは人間関係を描くのがすごくうまい。情景を変えずに会話を主体に人間関係をうまくいじくり読者を引き込んでいく技術はピカイチだと思う。今回の作品だと鈴木家の中でほとんどの話は完結するし、最初に彼の作品と出会った「悪夢のエレベーター」もエレベーターの中でほとんどの話が完結する。全く代わり映えしない情景なのにスリリングで店舗が良い話の流れは素晴らしい。

彼の作品のもう一つの特徴はオチだと思う。起承転結がしっかりしていて、結の部分で予想だにできない内容を持ってきているくせに、それが違和感なく物語に溶け込む。全てはこのオチを書くために本を書きだしたのではないかと思いたくなるほどきっちりハマる結末は気持ちいい。本作品でもこの気持ちのいいきっちりとハマった結末が待っているので最後まできっちり読んで欲しい。

あなたはラストで息を呑む – パーフェクト・ストレンジャー

見た。最後10分であなたはきっと騙されるというウリ文句に惹かれて見たが、ウリ文句に嘘はなく、僕はまんまと騙された。

話は主人公である女性記者が議員のスキャンダルをスクープした時から始まる。新聞の1面を飾ることが出来るほどのスクープだったが、議員の権力に酔って握りつぶされ、衝動的に新聞社をやめてしまう。そんな時に幼なじみからスクープを持ちかけられるが、その話を聞く前に幼なじみが殺されてしまう。少しだけ離されたスクープを元に幼なじみを殺した犯人を調査していく話となる。

全編を通してスリリングな展開がうまいと思う。ちょっとづつ暴かれていく周りの人間関係が面白い。あなたはきっと騙されるというウリ文句があった手前、どういうオチだろうとか考えながら見てしまっていたがきっちりと騙された。普通ならこれをオチにするだろうと考えるところをフリに使い、見ている人間を裏切ってやろうとしているところが交換が持てる。落ちに含みをもたせているのも非常に良いと思う。

最近見た映画の中では1,2を争うほどの良策だと思う。ミステリー好きでまんまと騙されたいと思っている人がいるとすれば見てほしい作品だと思う。