挑戦的な文章構成で読み手を選びそう – 殺意の対談

読んだ。挑戦的な書き方だなと思った。

この本は短編集でインタビューされている人間の心の声を記載しながら、途中途中で回想が入っていくという挑戦的な文章構成になっている。僕はかろうじて受け入れることが出来たけれど、なかなかすっと頭に入ってきにくい構成なので読む人を選ぶ作品だと思う。「殺意の対談」というタイトルだけに、対談中に言葉ではニコニコと話しているくせに裏側では殺意を抱いている裏表の描写や、対談している人間の視点が切り替わったときの見え方が180度変わってしまうストーリー展開は非常にうまいと思う。さらにバラバラに見える対談が最終的に一つになっていく様は玄人好みしそうな話だとは思うが、作者のドヤ顔が文章に透けて見える感じを受けてしまって別にそこまでしなくてもいいんじゃないかなと思わなくもない。

この作者は「神様の裏の顔」という本を読んでから新作が出る度に手にとって読んでいるわけだけれど、今のところ2冊読んで「神様の裏の顔」を超える面白さを感じることはなかった。だからといってこの本が面白くないというわけではなく、「神様の裏の顔」という作品が僕の好みにあっていて、非常に面白かったと言うだけなので、この挑戦的な文章構成が受け入れることができるのであれば読むに値する本だと思う。体に合わなかったらやめるぐらいの軽い気持ちで、最初10ページぐらい立ち読みしてから買うことをおすすめしたい。

砂に怖がらずに最後まで読んでほしい – 砂の女

読んだ。砂の描画が怖いし痛い。

ざっくりとあらすじを書くと「砂に埋れた集落に監禁された男の話」になる。とにかく砂が出てきて目を開けられないとか、汗で砂が湿ると体に張り付いて化膿するとか、つばが砂に座れて喉が渇くとか、うがいをしても砂が残るが喉の渇きに耐えきれずに砂ごと飲むとか、砂に関わる記述が生々しくて非常に怖い。閉じ込められる恐怖と砂による追い込まれ方とわけの分からない村人との会話といい僕だったら発狂してしまいそうな状況だ。

そんな恐怖に満ち溢れた物語だけれど、読了後はなんとも言えない気分になる。今いる自分の環境は砂に埋れた集落より良いのかもしれない。しかし、僕がいる環境よりもいい環境というのはいくらでもあるだろうし、その僕よりもいい環境に住んでいる人間からしてみれば僕はなんと恵まれない人間なのかと馬鹿にされるのかもしれない。結局人間は自分が与えられた環境でいかに幸せを感じながら生きていくかでしかなく、過去でもなく未来でもなく今を楽しむのが良いのだろう。

今いる環境をどうにかしようと未来に向けて生活するのもよいが、目指すべき未来にむかうよりも楽しく幸せな現実がすぐそこに転がっているのかもしれない。現在の状況というのは自分から見れば辟易するようなものかもしれないが、他人から見れば喉から手が出るほど欲しいものかもしれない。どんな環境であれ、直ぐそばにある幸せを感じることができるアンテナを張り巡らせる方が、生活水準を向上するためにもがくよりも豊かで楽しい人生を歩めるのかもしれないと思わされた。

読む音楽 – 蜜蜂と遠雷

読んだ。文章力に圧倒された。

ざっくりしたあらすじは音楽コンクールの人間模様になる。この本は本屋大賞と直木賞のダブル受賞というネームバリューとカードのポイントが余っていたので普段は買わない本を買おうという不順な動機が相まって買ったわけだけど、好みの話ではないが読んでよかったなと思うことが出来るぐらいの内容ではあった。音楽コンクールの話なので「音」についての記述が頻出するのだけど、音楽という物をここまで文字で表すことが出来るのかと驚愕した。読んでいて情景が浮かんでくるというのはよくあるが、「音」が聞こえてくる、しかも僕はクラシックなどほとんど聞いたことが無いにも関わらずクラシックの音楽が聞こえてきそうな文章というのは初めて読んだ。ここまで文章で表してしまったら、本屋大賞とか直木賞とかとるわなぁと思わず納得してしまう。

内容的には綺麗な話だなと思う。登場人物がほとんど天才だけれど、正統派の天才と突然変異型の天才の対決というのもなにかいい。悪く言えばありきたりの人間たちが出てくるわけだけど、すべての人が個性的で感情豊かですんなりと自分の中に入ってくる。努力型の凡人もちゃんとでており、こういう対決物としてよく浮かぶ人間のタイプはだいたい網羅されてる感がある。きれいな文章で綺麗な音楽を聞きたい人にはおすすめの本だと思う。

読了後に何を感じるのだろう – 豆の上で眠る

読んだ。映画に向いてそうな話だなと思った。

あらすじをざっくり書くと「姉を誘拐された妹が実家に帰省しながら誘拐されたことを思い出していく」話になると思う。湊かなえさんだけあって読み進めていけばいくほど続きが気になり引き込まれていく。最後にきっちりとオチがあるんだけれど、最終的に読者に投げかけてくる問いかけが非常に映画受けしそうなテーマで、映画化されることを前提として書いてたりするのかなと思ってしまった。

本の題名にも使われている「エンドウ豆の上に寝たお姫さま」というのは実在する童話のようだが僕は読んだことはない。豆の上に轢かれた布団の上で寝たときに、違和感を感じることができれば普段いいところで寝ているのでお姫様だとわかるというような話のようだが、この違和感がテーマの話を主題としてもってきているのも読み終わるとなるほどと思ってしまう。非常に面白いとまでは言い難いが、最終的に読者に問を投げかけるという終わり方が良くて家族関係に疲れた時に読むと良い一冊なのかもしれない。

私があなたであなたは私で – プリデスティネーション

見た。最後に向けての怒涛の伏線回収はすごいと思う。

ざっくりあらすじを書くと「タイムスリップして爆発犯を探す話」となるのだけど、そんなことはどうでも良いと思うぐらい中盤から終盤にかけての話の引き込み方がうまいと思う。場面場面がなんでこんなシーンを流してるんだろう?という話の連続なのだけれど、点がつながった先に完成する絵を見た時には理解に苦しむと思う。がしかし、理解した時には驚愕といろいろなシーンの伏線がわかりそう。

もう一回見れば面白いのかなと思わなくはないけれど、もう一度みたいと思えるほどは面白くはない。しかし、この難解でありながらも挑戦的な仕掛けは体感して損はないと思う。

ボタンを押したら誰かが死ぬ – 運命のボタン

見た。あらすじは好きだった。

ざっくりとあらすじを書くと「押したら大金が手に入るけど誰かが死ぬというボタンが届いたら人間はどうする?」となる。ボタンを渡しにくる人間の顔が欠けているのが不気味さを増幅していていいんだと思う。こういう話が好きで見つけたら見てるせいか、設定も流れも終わり方も既視感がいなめない。こういう類の話を最初に見るには良いのかもしれないけれどよく見ている人にはあまりおすすめしない。

ボタンを押したら何かが起こる系だと「5億年ボタン」とか「スイッチを押すとき」とかが有名なので、この作品とどっちをおすすめするかと言われれば後者となる。どうしても大金と死を天秤にかけてしまうと知らない人と知ってる人だと命の重さに違いはあるのか?とか、どれだけのお金が人の命と釣り合うのか?みたいな主題になりがちで展開が広がりづらくてむづかしいのかも知れないなと思った。

苦手だった作家が好きになった – リバース

読んだ。今までに読んだ本の中でベスト5に入るぐらい衝撃を受けた。

ざっくりあらすじを書くと、学生時代に犯した過ちを告発された主人公が真相を探す物語になると思う。うだつのあがらない主人公が真相を探してもがいている様は明日に向かって進もうとしている人間の様に見えて非常に共感できる。最後に伏線を回収していくのは気持ちいいしなによりオチがすごい。そんなばかなっと読む手が思わず震えた。読了後の気持ち悪さはひどいわけだがそれを差し引いても呼んで面白かったと思える。リバースというタイトルの意味が最初はわからなかったが、妻と話をしていて「主人公は最初に戻ったんだよ」と言われて腑に落ちた。なるほど。彼はずっともがき続けるしかないのだろう。

この話には救いなんて無い。もがき続けた結果わかったことはじっと耐えるしか無いということなのだろう。すべての事柄が空想で終わっているはずなのにここまで気持ちよく、気持ち悪く終りを迎える本を僕は知らない。ぜひとも読んでもらいたい一冊だと思う。

何故か釈然としなかった – ピエロがお前を嘲笑う

見た。絶対騙されるっていうのはそういうことじゃねーよって思った。

ざっくりあらすじを書くと、ハッカーに憧れる少年がハッカーになる話なんだけど職業柄細かいところがきになってあまり話が頭に入ってこなかった。闇インターネットっていうパワーワードが頭から離れないのは僕だけじゃないはず。ハッカーとしての類まれなる才能が開花して様とか、人間を見せるのは非常にうまいと思ったけど、あなたは絶対騙されるっていう言葉のせいでがっかりしてしまった。最後に落ちがあるんだろうと思ってみるのと、そうではなく見るのでは全然違うと思うんだけれど、絶対騙されるってこの騙し方はねーよって思ってしまう。なんていうか、最終的に全部夢でした!みたいなオチは卑怯だと思うんだけどそれと似たような物を感じる。上手くピースがハマっているかのようで僕は何故か釈然としなかった。

こうやって文章を書きながら思い返していみると僕には余り合わなかったと言うだけで面白いと思う人はいるのかもしれない。見たい人は見ればいいと思うけど、僕はあまりおすすめはしない。

あらすじからしてイカれている – 殺人出産

読んだ。村田紗耶香らしい本だと思った。

ざっくりあらすじを書くと「10人子供を産むと1人殺すことが出来る権利を得ることが出来る世界」を描いた本になる。あらすじを読んだだけでイカれていると思うかもしれないが、ちゃんと本の中身もイカれている。村田紗耶香らしく問題作と題される作品になるのだろう。村田紗耶香という作家は性と生について常々疑問を持っているのだろう。不倫がいけないといか殺人が行けないというのは現代社会の常識であり、常識が変われば全てが許されてもおかしくないのである。この現代社会という枠組みをちょっとずらして考える事ができてしまうがゆえに、普通の人が考えもしない疑問を投げかけてくる文章を量産し続けている。

村田紗耶香という人が非常に気になり、この人が書いた本を色々と読んで生きたわけだが、最終的に息つくるところは「生と性」に対する疑問以外無い気がする。あなたが思っている常識はみんなが常識だと思っているから常識なだけであって、ちょっとずらしてみると常識じゃないのかもしれないということを突きつけられるのは非常に面白いのだけれど、この人が「生と性」から抜けた本を書くことはあるのだろうか。もし書くことがあるのであれば読んでみたいが、それまではお腹いっぱいなので読まなくても良いかなと思えてきた。それで言うと「コンビニ人間」は「生と性」がテーマではないからこそ直木賞を取ることができたのかもしれない。タブー視されている部分を書いてくれる作家というのは希少価値が高いのだろうが、一般受けはしないのだろうな。

複数の謎が見事に解けていく – がん消滅の罠 完全寛解の謎

読んだ。ガンというものを学ぶ上でも良いと思った。

ざっくりあらすじを言うと、「末期がん患者と診断されたことによりガン保険の払い出しを受けた人間が立て続けに完治(完全寛解)したことを不審に思った保険屋が、なにか不正があったのかを調査していく物語」となると思う。なぜ末期がん患者のガンは消滅したのか?もし有効な治療法を確立したのであればなぜその治療法を世間に発表しないのか?などの疑問が少しづつわかっていく過程は面白い。理系の考え方がとして、ありえないことが起こったのであれば、一つづつ前提から疑ってかかる必要があるというのはすごく納得できる。

なにか突飛な話なのかと思いきや、たしかに現実的に起こりうるのではないかと考え扠せられることがこの本の一番の怖さであり面白さではないのだろうか。何となくこうなるだろうと思っていた結末とは違ったのだが、してやられたと思うほどではなく現実に起こりうるラインなことに市松の恐怖を覚えてしまう。この本では複数の謎が少しづつわかっていく様になっており、最後の最後まで謎が残っていく。しかし、最後の謎解きが一番インパクトが低かったのがちょっと残念だった。それいる?って思わず思ってしまうほどだったのだが、他の人はどう思ったのだろう。気になるところではある。